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王立図書館

狂王ルートヴィヒ 夢の王国の黄昏 ジャン・デ・カール 三保元訳 中央公論社
「異端の肖像}より バヴァリアの狂王 澁澤龍彦 河出文庫
Ludwig 村田經和 劇書房
湖のトリスタン ルートヴィヒUの生と死 田代櫂 音楽之友社
ルートヴィヒU・白鳥王の夢と真実 須永朝彦 新書館
神々の黄昏 ルートヴィヒU ルキノ・ヴィスコンティ シナリオ 山猫書房
『ルートヴィヒ 神々の黄昏』 ルキノ・ヴィスコンティ 映画
麗しの皇妃エリザベート ジャン・デ・カール 三保元訳 中央公論社
ドイツの城とワインの旅物語 井上宗和 グラフィック社
ルートヴィヒU 蒼き月影の狂王 氷栗優 角川書店
うたかたの記 森鴎外 新潮文庫
『月の王』 アポリネール傑作短編集 アポリネール・窪田般彌訳 福武文庫



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狂王ルートヴィヒ 夢の王国の黄昏

                      ジャン・デ・カール/三保元訳/中央公論社


は昔、市の図書館で耽読したうちの一冊がこれでした。

夏が過ぎ、秋も終わり、冬にさしかかった古い図書館の紙のにおいと埃の降り積もった片隅で、薄い西日を背に受けながら、この珍奇で、目覚める一瞬に見る脳を惑わすような悪夢にも似た王の物語に引き込まれ、時を忘れてむさぼり読んだのです。いわばこれがルートヴィヒUとの初めての出会いでした。ああ、懐かしい……・。

 本書の主人公、バヴァリアの王はまず即位当時のお伽話のプリンスのような容姿で私を捕らえ、常に斜め上空を凝視している虚ろな瞳と、彼に無視されたものたちの呪いを受けるように急速に崩れていく美貌と彼の頽廃的な性癖で、私の心の中に独自の位置を占めたのです。頽廃も狂気も奇行も、当時の私にとっては世紀末的なロマンであり、また、夢の中で悪夢を見、夢の残滓に現実をさらわれ、取り返しの付かない転落への道をたどる魂の彷徨に、限りない同情と涙と痼るような嫌悪感を残したのでした。

 この本を皮切りに、いろいろと関連の文献を繙いてみましたが、結局一番印象に残り、ルートヴィヒに対する認識形成の元になったのは本書でした。(今回読み返してみたら忘れていたことがたくさんあってちょっと驚き。人間の記憶っていい加減なものですね) 

 本書は私が今まで読んだ中で、最も詳細な内容を持っています。写真は少ないのですが、そのかわり2段横一列に『美の典型』と言われた即位の頃から、小錦と曙と武蔵丸を足して三で割ったように変わり果てた晩年までの写真が年代順に並べてあり、興味深くもあり、いささかイジワルと言う感じもあり…。しかし、引用されるエピソード、日記、手紙、人物評は豊富で詳しく、ルートヴィヒのひととなりを垣間見るにはまたとない資料だと思います。


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バヴァリアの狂王
 『異端の肖像』より    
 
                        澁澤龍彦/河出文庫


編ですがルートヴィヒのひととなりに迫った珠玉の一編。

ルートヴィヒの生涯成熟することのなかった魂(ルートヴィヒを語る上で避けては通れないワーグナーのオペラ、楽劇に向ける情熱、やむことのない建築熱、快楽と悔恨に満ちた奇妙な友情)について興味深く語られ、このバヴァリアの王のことを知らない人でもきっと惹きつけられるでしょう。

 この短編の特に魅せられるところは、他の伝記のように散文的ではなく、語られる一語一語が耽美な詩のように紡ぎ織られていくところです。ここではすべての散文的な事象が『病める魂の城』であり、『千夜一夜物語』であり、『神秘の月王』であり、『満たされることのない全能を、狂気をもって購おうとした一個の魂』の物語なのです。

澁澤氏の文章はそれだけで黒い魔術のように読む人を幻惑します。

そしてその妖しい言葉の魔術をまとったバヴァリアの狂王はさらなる伝説の衣をかさねるのです。

是非、ご一読を…・。

関連文献*
『ルートヴィヒとその城』『ルートヴィヒと奇妙な友情』
『ルートヴィヒUとその時代』 ……・澁澤龍彦全集18  河出書房


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Ludwig 村田經和/劇書房

 内容的には狂王ルートヴィヒと重複していますが(しかし刊行されたのは本書のほうが先)、それはルートヴィヒに関して調べ得る資料及び入手できる文献が出そろってしまって、新しい発見がないからなのでしょう。(ここであらたにパウル・V・タクシスやリヒャルト・ホルニヒーいずれも王の寵臣ーあたりの日記や手紙、ルートヴィヒ本人の戦争でなくなった日記そのものが出てきたらおもしろいのに…)

 本書は他の本より写真が多く、ルートヴィヒのまだ輝くばかりに美しかった頃の姿が見られて嬉しいかぎり。ことに私のお気に入りは1867年撮影ポートレート。(この年ルートヴィヒはゾフィ公女と婚約したが、後半生の伴侶となるリヒャルト・ホルニヒと出会い婚約を解消している) 私が見た中で一番凛々しく美しい。ポートレートのルートヴィヒUは蝶ネクタイにフロックコート、ストライプのトラウザーズ、トップハットを片手にひとみはどれも大概そうであるように斜め上空を見据えている。一見の価値ありですよ。その他ゾフィ公女のチャーミングな写真やノイシュバンシュタイン城の設計プラン数点、焼失したフンティングの小舎の絵や、ヘーレンキームゼ-城、リンダーホーフ城などの写真が豊富。関係者の写真も多い。幻のファルケンシュタイン城のプラン図もあります。

 ルートヴィヒUを退位させるために、ルイトポルト派(ルートヴィヒU叔父)が作成させた精神鑑定書の証言が、箇条書風に証言者の名前付きで紹介されているのがとても興味深いです。証言の中にルートヴィヒUにもっとも信頼され、ほぼ後半生をともにしたリヒャルト・ホルニヒのもあるんですが、それがかなり王に対して不利な証言で、デュルクハイム侍従武官などのとった行動に照らし合わせてみるにあまり気持ちのいいものじゃないのが気にかかります。何だかんだといっても、お払い箱にされたのには違いないから、しょうがないのでしょうか。でも死体に鞭打つようなまねはあまりいい趣味とはいえない…。もっとも、どこかのスポーツ誌のように都合のいいよう証言を編集されてしまったってこともあり得るし……。人の本当の気持ちというものはよくわからない、ですね

 王の死因については仮説を3つ立て(逃亡説についてちょっと面白いことが書いてある…)、一つづつ消去していき、あとはシュタルンベルク湖の水の女神に従い沈黙を守ることで余韻を残しています。

 この本のプロローグは大変美しく、感動的ですので機会があればご一読のほどを。



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『湖のトリスタン ルートヴィヒUの生と死』

                                      田代櫂・音楽之友社

『狂王ルートヴィヒ』や『Ludwig』に比べたら随分読みやすいです。内容は一人の人間の伝記だけに、生まれてから死ぬまでの事件、エピソード、手紙、日記など前2作と一緒かその略。(『 Ludwig』の鑑定証言でいい気持ちのしなかったホルニヒ証言だが、証言するまで長い躊躇いがあったという記述がこの本で発見され、それが救いかも。あと、ヴェーバー君の年の頃がわかる記述は個人的に嬉しい)

 この本はルートヴィヒの死に謎はなく、自殺であることを立証するのを一つの目的に据えてるようで、シュタルンベルク湖の王の遺品、死体発見現場、風向きなど図解入りで述べられ、自殺の動機をルートヴィヒが最も大事にしたワーグナーの作品『トリスタンとイゾルテ』に絡めて解き明かしていきます。

 ルートヴィヒの死は、現実の多くがそうであるように、ロマンのかけらもないのかもしれないけど、警察の調書のような真相なら、虚飾に満ちた伝説の方が好ましいというのが私の意見。たとえすべての客観的事実がその伝説とロマンの否定を指し示していても…・。

 もっとも、この本は決して調書のようではありません。読みやすいし分かりやすいので、初めてルートヴィヒの伝記を読む方にはお薦めです。

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『ルートヴィヒU・白鳥王の夢と真実』

                                         須永朝彦/新書館

 読みやすさでは『湖のトリスタン』と双璧。よってルートヴィヒの生涯は簡潔に書かれ、短時間で概要を知ることができて嬉しい一冊。でも、ルートヴィヒの最後を飾る謎の入水譚については簡潔すぎておもしろくない…。どうせだったら証拠をこじつけて森鴎外なみの斬新な推測を読ませて欲しかった。でも、それじゃあ伝記物じゃなくなってしまいますね(笑)。 そうそう、鑑定証言もあるけど誰の証言か省略されているので物足りない。

 そのかわり他と違って秀逸なのは『ルートヴィヒUに捧ぐ』という最終章です。ルートヴィヒに関する書物、映画、詩などが取り上げられ興味深いものがあります。アポリネール(有名な「日よ暮れよ 鐘も鳴れ 時は流れ 私は残る」の、ミラボー橋のアポリネールですね)の『月の王』は読んでみたいけど、今の時点ではみつからない〜。バレエ『幻想・白鳥の湖のように』も観てみたいです。94年に日本で上演されたそうだけど、もうやらないのかしら…・。

 余談ですが、本の帯の“美と頽廃のアンドロギュノス 私しか愛せない”ってコピーは個性的でパンチが効いてたです……・・。なんか別のジャンルの本みたいでちょっと嫌かも




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『神々の黄昏 ルートヴィヒU』
                          
ルキノ・ヴィスコンティ シナリオ/山猫書房

映画のシナリオ本。

伝記では名前しか出てこない関係者のキャラクターがわかり、流れをつかむにはもってこい。映画だから史実に忠実でないところもあるけれど、裁判所での(ルートヴィヒの関係者らの)供述シーンが読みたくてつい買ってしまいました。

ルートヴィヒの奇妙な友情に与った重要代表人物、パウル・フォン・タクシスの代わりに馬丁フォルク氏(ルートヴィヒとの関係を吹聴して歩くので遠ざけられたそうだが)が取り上げられ、なんだかかえってアヤシイ感じを出すのに一役買っています。また当時の宮廷の様子を知るのによい資料にもなりますが、私としてはシナリオより映画の方が観たかったです。ちょっと前(少なくとも6〜7年は前かな)までは店頭でビデオ版が売られていたような気がしますが、最近ではとんとお目にかからなくなってしまいました。「ベニスに死す」や「地獄に堕ちた勇者ども」(この2作は私の趣味じゃなかった。やたら暗くて耽美というより不健全な感じ。ヘルムート・バーガーの嘆きの天使ばりの女装には思わず号泣)はあるのに、同じドイツ3部作の一つのこれがないのは納得いきません。

*関連文献*

 『私は謎、謎のままでいたい ルートヴィヒとワーグナーの夕べ』           
                            ルキノ・ヴィスコンティ・ある貴族の一生より

  ヴィスコンティ監督の生涯に絡めての「神々の黄昏」メイキングオブ。



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『ルートヴィヒ 神々の黄昏』

                                ルキノ・ヴィスコンティ監督
                          ヘルムート・バーガー主演

             
 灯台もと暗しとはよく言ったもので、山野楽器にさえ置いてなかったビデオが近所のレンタル屋にあった!(^^)! あったのはいいけど、くたびれた見てくれ通りノイズだらけで、画面を砂嵐が襲う度わたしの血管は切れそうになりました。 
 それはおいておいて。肝心の内容のほうですがまるで教育テレビの文芸作品風でドキドキのスリルとは無縁。終始淡々としてました。記録映画ではないので、史実と反するところもありますが(このへんシナリオと一緒)人物が動いているのが最大の強み。とくにルートヴィヒを演じたヘルムート・バーガーのガラスのような美しさは本人の生き写しで、まるでルートヴィヒ自身が演じているのではないかと疑うくらいです。ヘルムート・バーガーを見るだけでも価値のある作品です。
 しか〜し、台詞がどうも『白鳥王の〜』にも指摘してあった通りイタリア語らしく(監督がイタリア人だからしょうがないのかもしれないけど)、せっぱ詰まった場面で『セニョーレ!セニョーレ!』と叫ばれたり、ミュンヘンを『モナーコ』なんて言われるとちょっと興ざめ。ルートヴィクってとこだけイタリア語と訛ったドイツ語と同じで妙に感心してしまったけど、どうせなら徹底してドイツ語でやってもらいたかったです。
 やはり、映画とシナリオとでは結構違います。あるはずのシーンがなかったり、ないはずのシーンが挿入されたりしている。シナリオの方が、カットされてない分だけルートヴィヒの心理的動きがよく描写されていると思います。映画の方はルートヴィヒを知らない人や、さして興味のない人には退屈かも。(長いし、この映画)
 私は馬丁フォルクとルートヴィヒの湖でのシーンが大幅にカットされていたのと、ラストの暗殺も証拠を語る老従僕のシーンがカットされていたのが残念でした。…・ルートヴィヒがホルンシュタインに蹴りを入れるシーンもなかったような気がしたけど見逃したかな。それともノイズで消えたのか? 反対にルートヴィヒに女性の魅力を教えるため送り込まれてきた女優のリラの台詞の増加と、ヘーレンキームゼー城を訪れたエリザベートがヒステリックに笑うシーンが加わってたのは個人的に気に入ってます。 でもシナリオにあるはずのシーンがあって、ないはずのシーンはなかった方がよかったかも。
 ルートヴィヒが愛したと言われる美青年がいまいちよくなかったのは残念です。リヒャルト・ホルニヒの髪はきれいなブロンドじゃないうえ(彼の場合ホルニヒじゃなくてホルニッヒ。この響きの方が彼には合っている)イタリアルネッサンスの宗教壁画って感じで少なくとも私の好みじゃなかったし、フンティングの小舎のシーンなんてまるで、男だらけのオクトーバーフェストで全然麗しくないの。言っていいならむさ苦しい。もっともヘルムート・バーガーの繊細で壊れやすく、危うい美しさの前にはどんな花も造花のように味気なく、色あせて見えるのかもしれませんが。(しかし、ヘルムート・バーガーの美しさたるや、さすがヴィスコンティ監督が気に入って自室に彼の写真立を後生大事に飾っていただけはあります。このへん、ルートヴィヒの小さな写真を大事に持っていたビスマルクに似てる(^_^))
 忘れてはならないのが映画で使われている曲。要所要所にながれるシューマンの子供の情景はワーグナーの自己主張の強い曲より、生涯成熟することのない魂を持ったルートヴィヒには似合っていると思います。この選曲、気に入ってます。
 この映画はルートヴィヒの死に、暗殺説を採っています。話しの流れ上、まるでホルンシュタインが撃ち殺したように見えるけど、そういうつもりだったのかしら。
 とにかく、絢爛豪華な衣装、宮廷風景、現地撮影の『病める魂の城』、ヘルムート・バーガーを見るだけでも価値がありますので、機会があればどうぞ。                           (全2巻。約4時間)



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『麗しの皇妃エリザベート』

      ジャン・デ・カール/三保元訳/中央公論社

 著者は『狂王ルートヴィヒ』と同じ人。

ルートヴィヒの愛したもの、「ワーグナーと美青年、そして美しいオーストリア皇妃エリザベート」。本書はこのエリザベートの伝記です。この本にも、『狂王ルートヴィヒ』と同じようにエリザベートの十代の頃から晩年までの写真が2段一列で並べられているが、ルートヴィヒと違いエリザベートは年々美しさが増していくのです。(殺人的なダイエットと運動が功を奏したのでしょうか…。見習いたいものです)

 この本にはリザベート側から見たルートヴィヒや手紙もありとても面白いです。また、ルートヴィヒとは別に、エリザベートの、魂がせかされるように旅から旅へと明け暮れた人生も読む人の魂を揺さぶらずにはおかないでしょう。

 
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『ドイツの城とワインの旅物語』 井上宗和/グラフィック社

ルートヴィヒの3つの城がカラーで見ることができます。ついでに王の終焉の地、シュタルンベルク湖もカラーで見られます。(…シュタルンベルク湖では遊覧船がでており、ベルク城を見ることができるというような記事をどこかで見たことがあるんですが、記憶が定かではありません。

*後日補足:船、出てます。詳しくはここへStarnberger See

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『ルートヴィヒU 蒼き月影の狂王』

                  氷栗優/角川書店 ASUKA COMICS DX

漫画です。こういう歴史物描くなら池田理代子しかいないだろうと思ってたけど、なかなかどうして、好みでございます。もっとも池田理代子が描いていたら、きっとパウル・フォン・タクシスはルートヴィヒを傀儡にしようと狙っていた佞臣によってあらぬ噂をまかれ退けられた、ただの腹心の友になり、リヒャルト・ホルニヒは男装の麗人になっていたことでしょう

 この本のルートヴィヒは(少女漫画だけあって)まさに理想です。こうあれと願うルートヴィヒが描かれてある。優柔不断で煮え切らず女々しいと(伝記では)思われたことも、華やかな苦悩のように見えてくる。漫画から入って伝記読むと、ありとあらゆる違いにショックを受ける人もいるかもしれないけど、その逆なら一種のカタルシス。できれば伝記の方を先に読むことをお勧めします。

 ところで私は心秘かにこの漫画の今後の展開に期待しています。特に“鍵”なんて王のノイシュバンシュタイン城での最後のシーンでいいエピソードになると思います。それからホルニヒに双子の兄がいたと言う設定も使いようによっては面白いトリックになるし、ルートヴィヒの最期を飾るシュタルンベルク湖での伝説とか、漫画ならではの脚色が楽しみです。(…実は私、逃亡のような自殺説をプッシュしてるんです。漫画ではどう展開するのか楽しみです)

 理屈抜きで面白いから是非読んでみてください。

追記:もしカセットドラマ化するのなら、リヒャルト・ホルニヒの声には柏倉つとむ氏を推薦します。

*後日補足:このマンガ98年に完結いたしております。全3巻。あの見る影もなくなった晩年の王の姿や、白鳥城での最後(期ではなく後ね、ここでの意味は)のシーンなどどう描くか興味津々でしたが、そういう手があったか、と感服させていただきました。詳しくは書きません。みなさんご自分で確かめて下さいね(ラストは急いだかなあって感じはあるけど、雑誌が廃刊の憂き目にあってしまったのだからいたしかたないのかもしれません。)

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    『うたかたの記  森鴎外/新潮文庫

 ドイツ3部作のひとつ。 

 ルートヴィヒがバヴァリアで奇怪な夢に取り憑かれていた頃とほぼ時を同じくして、森鴎外こと森林太郎は伯林のブルンデンブルク門付近でブロンド美少女をナンパしていた…・らしい。それはおいておいて! 本書では金髪美少女マリイがシュタルンベルク湖で画家巨勢と船を浮かべていたところ、たまたまルートヴィヒがグッテンを伴って散歩に来ており、船上のマリイを見た王がマリイを彼女の母親と見間違え(かつてルートヴィヒはマリイの母親に横恋慕しており、母娘は生き写し)、狂ったように船に突進し溺死、それに驚いたマリイも船から落ちて溺死するというような粗筋。文体は舞姫と同じ擬古文調で読みづらく、当時でさえ公然の秘密であった(らしい)ルートヴィヒの美青年趣味を無視して、美しい人妻への落花狼藉は違和感を感じてしまうが、船上に恋い焦がれた幻を見つけ、我を忘れて水中に飛び込んでいくという筋書きは充分ロマンチックで美しいと思います。

 

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月の王』 アポリネール傑作短編集   

                   アポリネール・窪田般彌訳/福武文庫

 死んだはずの王が、実はチロルの山奥の洞窟でたくさんの美青年に傅かれ、世にも奇妙な生活を送っていたという筋立て。……個人的な意見ですがあまり面白くなかったです。発想は良かったんだけど、いまひとつ何かが足りない。でも、月の王というネーミングはさすが詩人という感じです。


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